プロフェッショナル×トライアスリート ファンドマネージャーが実践する、成果を出す時間管理法 須藤 友子

不完全燃焼の
IRONMAN世界選手権、その先へ

― 2023年にIRONMAN世界選手権(KONA)*1へ出場されたそうですね

2022年にマレーシアのIRONMAN Malaysia*2に出場したところ、翌年のIRONMAN世界選手権(KONA)の出場権を獲得することができたんです。それまで佐渡トライスロンや五島バラモンキングなど、国内開催のロングレースにはよく出ていたのですが、IRONMANはMalaysiaが初めてでした。それも、人に「トライアスロンをやっている」と言うと絶対に「IRONMAN?」って聞かれるので、一度くらいは出ておこうかな、そんな軽い気持ちだったんです。友人に誘われて出場したので、特に年代別で入賞してIRONMAN世界選手権の出場権利を獲得なんて思ってなく、本当にたまたま切符を手にした感じでした。
*1 2023年IRONMAN World Championship(女性)はハワイ島コナで開催
*2 マレーシアのランカウイ島で開催

― IRONMAN世界選手権はどうでしたか?

初めてのハワイだったこともあって、環境自体は最高に楽しめました。ただ、肝心のレースは不完全燃焼で終わってしまい、すごく心に残りましたね。身体の調整もよくなかったし、メンタル含めてレースに至るまでの持っていき方も不完全で。「出場できてよかった」という気持ちは本当なんですが、私の中では、もっとやれたはず、という思いが残ってしまいました。

― 現在KONA Challengeに挑戦中だそうですね

KONA Challengeの第3期に参加しています。コナチャレはもともと「KONA出場を目指そう」というコンセプトなので、一度KONAに出場している人は参加資格がなかったんです。でも第3期から、既にKONAに出場したことのある人がさらに上を目指すというアドバンスドステージが新設されて、ありがたいことに参加できることになりました。「不完全燃焼だったレースのモヤモヤを、次は納得のいくレースに変えたい!」そんな思いで挑戦しています。
* 通称コナチャレ。トライアスロンの専門誌が主催する3年間のチャレンジ企画

友人の応援で観た
IRONMAN 70.3 Taiwanが原点

― トライアスロンに興味を持つきっかけを教えてください

以前仕事で台湾に住んでいたんですけど、そのとき友人がIRONMAN 70.3 Taiwanに出場することになって「せっかく台湾にいるなら応援に来て」と誘われたのがきっかけです。当日はレース会場まで1人で何時間もかけて移動し、無事に応援に間に合ったんですが、初めて見るIRONMANのゴールシーンに感動しましたね。「何このスポーツ、めちゃくちゃかっこいい!」って。ルールも何も知らなかったけど、トライアスロンってすごいな、と強烈に心に残りました。
* 台湾南部Kentingで開催

― トライスロンはどのようにして始められたのですか?

それからすぐに始めたわけではないんですが、「いつかやりたい」という思いはずっと心のどこかにありました。実は台湾にいたとき、街中の人たちがみんなGIANTのロードバイクに乗っていて、自分もその影響を受けて「かっこいいな」と興味を持ち続けていたこともあり、帰国後すぐに都内のGIANTストアに行きロードバイクを購入。今もそのロードバイクは愛用しているのですが、購入直後は1人で乗るのはなんだか怖くて、しばらくは“寝かせて”いましたね。当時は運動不足だったので、まずはマラソンから始めて、初めてのフルは、5時間20分。それでも少しずつ身体を動かす習慣がついてきて、いよいよ「本格的にやってみよう」と思ったのは数年経ってからでした。自分の誕生日をきっかけに「このタイミングしかない」と思い立ち、ネットで検索して見つけたのが青山トライアスロンクラブ(青トラ)です。思い切って問い合わせて入会し、ちょうどエントリーできるレースが九十九里だったので、締切ギリギリで申し込みましたね。
* 台湾に本社を構える世界最大のスポーツサイクルブランド

― 勢いで申し込んだ初レースはどうでしたか?また、チームメンバーとのつながりは生まれましたか?

初レースは、とにかく「できた!」という喜びが大きかったです。誰も知り合いがいない中、1人でエントリーして、まだまだバイクも遅いし、九十九里の視界の悪い海を泳いで…。不安は山ほどありました。でも無事に完走できて、「私でもできた」という達成感がすごく得られましたね。
最初はチームの人とも挨拶する程度で、けっこう孤独だなと思ったんですけど、レース後の打ち上げで多くのチームメンバーと話す機会があり、「いろんなバックグラウンドの人がいるんだ」と驚きました。それがきっかけで一気に世界が広がって、青トラの仲間たちと一緒に練習したり大会に出たりするようになっていきましたね。最初の一歩を踏み出して本当によかったと感じています。

仕事もトレーニングも段取り重視

― 普段はどのような仕事をされているのですか?

大学卒業以来、ずっと金融業界で働いています。現在はファンドマネージャーとして資産運用の仕事に携わっています。株式運用が専門で、少し前までは、市場の動きや企業の特性など、日々膨大なデータと向き合いながら投資判断を下してきました。今は、直接売買する機会は減りましたが、それでも毎日億単位の資金を動かしています。ただ、私の職場では在宅勤務と出社を自由に選べるので、比較的フレキシブルな働き方ができていると思います。

― 時間の制限がある中でトレーニング時間はどのように確保されているのですか?

朝は苦手ですが、無理やり朝型の生活スタイルにしているので、早朝5時に起きて少しでもトレーニングするようにしています。夜は仕事の状況や予定に左右されやすいので、朝の時間を“自分のための時間”として確保すると安心なんです。もちろん、夜の方がまとまった時間が取りやすいこともあるので、場合によっては夜にもしっかりトレーニングします。ただ、絶対に睡眠は削りたくないので、遅くとも23時には寝るようにしていますね。練習も仕事も、パフォーマンスを保つにはコンディションが重要なので、忙しい日々の中でも、なるべく生活リズムを崩さないように意識しています。

― 効率よくトレーニングをするためにどのような工夫をされていますか?

時間がないのは皆さん同じだと思いますが、私はとにかく段取り重視です。頭を使って効率的にやることが好きで、無駄が嫌い(笑)。練習も闇雲にやるのではなく、「こうしたらこうなるのでは?」という仮説を持って取り組んでいます。
きっかけのひとつが、スマートコーチングの安藤隼人さん*1を通じてバイクのコミュニティに入れてもらったことです。そこにはロードバイクに真剣に取り組む人たちがいて、彼らの姿を間近で見るうちに、「もっと効率よく強くなる方法があるのでは」と感じるようになりました。週末のライドやクリテリウム、エンデューロなどに集中して取り組んでいく中で、明らかにバイクの成績が良くなっていって。「こういう練習をすればこうなる」という因果関係が見えてきてからは、ただ練習するのではなく、仮説を立てて検証するスタイルへ自然と変わっていきました。それが結果に表れると本当に楽しくて。実は練習自体はそれほど好きではないんですが、工夫して成果が出ると、まるでゲームのように面白くなってくるんです。最近はその考えた方をスイムやランに応用し始めていて、近代五種・元日本代表選手の平田栄史*2さんに師事し、身体の仕組みを学んだりフィジカルトレーニングにも取り組んでいます。トレーニングにファンダメンタルなアプローチ入れることで、時間的に練習量を増やせないながらも、確実に3種目全てのパフォーマンスが向上していることを実感しています。今は特にスイムを強化中ですね。
*1 株式会社スマートコーチング 代表
*2 株式会社エスセンス 代表

― モチベーションが上がらないときは、どうしていますか?

基本的に、疲れたと思ったら無理はしません。練習するか休むかで迷ったら、私はわりと迷わず休むタイプです(笑)。オフシーズンは特に気が緩んで、ついサボりがちになります。だけど、目標レースが近づくと「やらなきゃ」という気持ちに自然と切り替わる。追われる感はあるんですが、それが自分の中ではいいプレッシャーになっているんです。誰かに勝ちたいとか、優勝したいというよりは、「いいレースがしたい」という思いが強いんだと思います。とはいえ、大体思い通りにはいかなくて(笑)。「あの時のあれがダメだったな」と反省して、次こそは、という流れを繰り返している感じですね。なんで続けているのかと思うこともありますけど、でもやっぱり「楽しいから」この一言に尽きると思います。

ワークライフバランスのロールモデル

― 職場の人は須藤さんがトライアスロンをやっていることをご存じなんですか?

実は最初、ひた隠しにしていたんです。でもIRONMAN世界選手権の出場が決まって、さすがに長期休暇が必要になり、初めて上司に話しました。そのとき職場は繁忙期だったんですけど、なんと3週間の休みをくれて。周りの人にも言って、みんな快く送り出してくれましたね。今では「今日練習あるんで」とか「レースなのでこの日休みます」とか、気軽に言えるようになりました。

― 周りの人にも影響を与えたんじゃないですか?

そうですね、きっと影響はあったと思います。スポーツに限らず、新しく何かを始める人が増えましたし、私自身がワークライフバランスを大切にしている姿を見て、周囲の人たちも「ちゃんと休んでいいんだ」とか、「今日は早く帰りたい」とか、そういったことを自然に口にできるような雰囲気が生まれたと思います。仕事だけでなく、プライベートを含めた“自分の時間”を大切にすることが、今の時代すごく大事だと思うんです。その意識が広がって、チーム全体に良い流れができていると感じています。

― 須藤さんの5年後10年後は?

正直言って、5年後、10年後何をしているかは自分でもわかりません。でも、何かしら挑戦はしていると思います。それはトライアスロンかもしれないし、全然違う分野のことかもしれない。「無理だと思っていたことに挑んで、それを乗り越えていくこと」が、私にとって一番ワクワクすることなんですよね。「こんなことできるわけない」と思っていたものが、少しずつ「できるかも」になって、最終的に「できた!」に変わる。その過程が好きなんです。
まず今はKONA Challengeを3年間頑張って、その中でもやりたいと思ったことにはなるべく挑戦して、自分が「できた!」と思える実感を追い求めていきたいと思います。

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須藤 友子

私のタイムスケジュール

平日スケジュール
休日スケジュール

私の記録

2024年 佐渡国際トライアスロンAタイプ 女子総合6位
2024年 全日本トライアスロン皆生大会 年代別優勝
2023年 IRONMAN World Championship(KONA) 完走
2023年 Mt.富士トライアスロン富士河口湖 年代別準優勝
2023年 全日本トライアスロン皆生大会 年代別7位
2022年 IRONMAN Malaysia 年代別4位
2022年 千葉シティトライアスロン 年代別優勝
2022年 Mt.富士トライアスロン富士河口湖 年代別4位
2022年 うつくしまトライアスロンinあいづ 年代別準優勝