xxyxyyyxyyy 奥村 康仁

滋賀のトレランチーム“シガウマラ”

― トレランチームの代表をされているそうですね

滋賀県を拠点に活動するトレランチーム「シガウマラ」の代表をしています。私は皆からは“族長”と呼ばれています。メンバーは“族員”です。現在は全国に 102名の族員がいて、東京から石垣島まで日本各地に幅広くいます。
シガウマラは 2014年、兵庫県の「いながわ里山猪道トレイルラン」の前身の大会で、上位 5人が全員滋賀県大津市のランナーだったことがきっかけで生まれました。何かの縁を感じ、京都駅前の居酒屋で打ち上げをしたのが最初の集まりです。そこから友達が友達を呼び、自然と輪が広がっていきました。最初は 10人ほどの同好会のようなものだったんですよ。

― “シガウマラ”というチーム名の由来は?

チーム名の由来は、書籍『BORN TO RUN』に登場するメキシコの先住民族「タラウマラ族」です。彼らは驚異的な持久力を持ち、長距離の達人として知られています。作中では「人間は本来、走るために生まれた」というテーマの象徴的存在として描かれているんです。チームの初期族員の 2人がこの本を読んでいたことがきっかけで、雑談の中で自然と決まりました。
*クリストファー・マクドゥーガル(著)全米 20万人の走りを変えたニューヨークタイムズ・ベストセラー

日本代表選手も所属するトレランチーム

― 世界で活躍する強豪選手も所属しているそうですね

シガウマラには日本代表クラスの選手も多く在籍しています。たとえば、西村広和選手(日本代表)、板垣渚選手(アジア選手権代表)、竹村直太選手(ウルトラロングトレイル界の次世代エース)、長谷怜信選手(U23 日本代表)など。女子では楠田涼葉選手(日本代表)、向井成美選手(Lake Biwa100 三連覇)をはじめ、ワールドクラスの選手から国内レースの表彰台常連選手が揃っています。
実はシガウマラには 1軍から 53軍までありまして、1軍は日本代表クラス、2軍は国内メジャー大会表彰台クラス、53軍はそれ以外のファンランナーで、通称“ごみ軍”とシャレで呼ばれています(笑)。実際には一番多いのがこの 53軍で、楽しむことを目的に走っている族員です。トップ選手もファンランナーも分け隔てなく、同じ族員として並走している。それがシガウマラらしさですね。

― なぜシガウマラに多くの選手が集まってくるのですか?

私たちはこれまで一度も族員の募集をかけたことはなく、入族方法はシガウマラ族員からの紹介だけです。たまたま山で一緒にトレーニングして意気投合し、その流れで入族するケースがほとんど。人とのつながりやコミュニケーションの中で自然と輪が広がっていきました。要するに、シガウマラに馴染めて気が合うかどうか、そこがいちばん大事なんだと思います。また、よくあるランニングクラブのように定例練習会や会費といった仕組みも設けていません。そうしたルールがあると、かえって自由に活動できなくなってしまうこともありますからね。あくまで本人の自主性に任せるスタイルで、逆にそれが気軽でいいという声も多いですね。

― トップ選手たちも、勧誘ではなく自然に集まったんですか?

そうなんです。トップ選手たちも自然なつながりの中で仲間になっていきました。たとえば板垣選手は、大津を拠点に活動しているランニングサークルに所属していたんですが、トレランも熱心にやっていて、普段から私たちと一緒に練習していたんです。ある日ふと、「そういえば正式にはシガウマラに入ってなかったよね?」という話になって、「あ、そうですね」と(笑)。そんな流れでごく自然に入族しました。竹村選手はもともと京都出身で、大学進学で金沢にいたんですが、関西に戻ってきて滋賀県の大会に初めて出場したとき、いきなり 3位に入ったんです。そのとき 1位と 2位がシガウマラの族員で、その後「関西でもっとトレランを頑張りたい」という彼の相談を受けて、一緒に練習するようになり、気づけば族員になっていましたね。今では“ウルトラロングトレイル界の次世代エース”として各メディアから取材を受けたりしているようです。長谷選手との出会いは、彼が立命館大学のクロスカントリースキー部の学生のときでした。競技力を上げるためにスポーツ栄養学を学びたいと、シガウマラの族員でもある石原健吾教授(龍谷大学 運動栄養学教室)を訪ねたのがきっかけです。その後「トレランにも挑戦してみたい」となって、シガウマラで一緒に練習するようになりました。あっという間に力をつけて今では U23 日本代表です。
こうして見ても、シガウマラはやっぱり“縁”でつながっているチームなんですよね。現在は族員が 100名を超え、全国に広がる大所帯になりました。ただ、あまり増えすぎると互いの顔が見えなくなってしまうため、今は新規の入会は丁重にお断りしています。シガウマラは、あくまでも“仲間としての距離感”を大切にしたいんです。

― 族員同士はどのように練習しているのですか?

Facebook の非公開グループで誰かが声をかけて、行きたい人が自由に参加するスタイルです。集まりやすいのは土曜の朝で、ビルドアップ走をしたり、坂本比叡山からの登山道を使ってインターバル走をしたりしています。そのほか、北アルプスでの合宿や、びわ湖一周(通称ビワイチ)を徹夜で走るといったチャレンジ企画をする族員もいますよ。
人数が多いので、自分と近いレベルの仲間と練習ができるのもいいところですね。同じ練習会に走力の異なる族員が混ざっても、走っているうちに自然と 3つくらいのグループに分かれてうまくやっています。トップ選手だけの練習会ではなく、誰でも気軽に参加できる、それがシガウマラの魅力のひとつだと思います。

家族との朝食時間までに帰宅

― 夫婦で族員という方も多いそうですね

シガウマラには夫婦でアクティブな族員が多く、トレランもそうですし、アウトドアやキャンプを家族で楽しんでいる人が多いですね。たとえば、現在仕事の都合で石垣島に住んでいる茂山和生、奈緒子夫妻や地元滋賀県在住の千代勝博、のぞみ夫妻は、どちらも表彰台に立てるほどの実力者。午前は夫が練習し、午後は妻が練習するなど、お互いに子どもを見ながら上手に時間をやりくりしています。
レースに関しても、1年のなかで「ここは夫が出たい大会」「ここは妻が挑戦したい大会」というふうに話し合いながら、無理のないよう予定を立てているようです。夫婦でバランスをとりながら、お互いの挑戦を応援し合っている。その姿にはいつも感心させられます。

― “シガウマラ族は家族愛が強い”という評判は本当ですか?

本当です。族員は 20代から 60代まで在籍していますが、なかでも 40代の子育て世代が多く、みんな家族を最優先に考えていますね。特に子どもが 0歳児、1歳児の族員は、家族の朝食に間に合うように帰宅するため、早朝に練習をしています。普段は朝 6時から、夏場は 4時や 5時スタート。だから“朝 4時起きのヒーローたち”なんです(笑)。私も子育て中は、年に 1~2本のレースに抑えて家族とのイベントを優先していましたが、今の族員を見ていると私以上に家族を大事にしているなと感じますね。

― 家庭とレースの両立の秘訣は何だと思いますか?

海外レースに行く族員もいますが、みんな日頃から家族への感謝やケアを怠りません。家を長く空ける分、普段から“嫁ポイント(YP)”や“婿ポイント(MP)”を貯めておくんです(笑)。冗談のようですが、それくらい家族を思いやる気持ちが根底にある。練習もきっちりやるけど、家族行事も疎かにしない。やっぱり家族の理解があってこそトレランを思い切り楽しめるんだと思いますね。

― シガウマラが強くなる理由のひとつに、環境の良さもある気がしますね

滋賀県にはすぐ近くに比叡山や東海自然歩道があり、練習環境としては本当に恵まれています。私の自宅からも、走ればわずか 5分で山に入れるんです。東京のように移動に時間を取られない分、その時間を家族との時間に充てられる。朝練をしても午前中にはすべて終えられるので、無理なく両立できるんです。こうした環境があるからこそ、家庭を大切にしながら挑戦を続けられるのかもしれません。

As You Like It!

― 族長として、運営で大切にしていることは?

シガウマラの運営でいちばん大切にしているのは“自主性”です。私が好きな言葉に「As You Like It(お気に召すまま)」というのがあります。その意味のとおり、族員一人ひとりが自分のペースで、自分の目標に向かって自主的に取り組む。それがシガウマラの根っこにあります。速いか遅いかはまったく関係ありません。大事なのは“自分が立てた目標に対してどう向き合うか”。それぞれの挑戦を尊重し合える、この空気感こそがシガウマラらしさだと思っています。

― ご自身の今後の目標は?

私は来年で 60歳になります。目標は「Mt.FUJI 100*1」で 60歳以上の部(レジェンド)で優勝すること。そして UTMB*2 にも挑戦したいと思っています。60代の海外選手は本当に強いですが、その中でも表彰台、できれば 3位以内には入りたいですね。
ただ、昔のように結果だけを追う気持ちはもうありません。今は、レースそのものだけでなく、その前後の時間、旅先での出会いや食事、景色も含めて“挑戦のすべて”を楽しみたい。そんな心境です。
*1 日本最高峰レベルの国際トレイルランニング大会。例年 4月下旬に開催。
*2 UTMBとは、「ウルトラトレイル・デュ・モンブラン」の略称。ヨーロッパアルプス最高峰モンブランを一周する世界最高峰のトレイルランニングレース。

【商品Pick up】UTA SUPLI を飲みはじめて―

天然ナマコを原料にしたUTA SUPLIは、私にとって欠かせないサプリメントです。化学合成物質ではなく自然由来なので安心して摂れますし、高純度のアミノ酸がしっかり効いている感覚があります。
特に今年の夏、北アルプス 30座(総距離 300km超・累積標高 28,000m)をすべて自力で踏破するセルフチャレンジ形式イベントの大北アルプス 2025 を 29日間で踏破した際、極度の疲労時に飲むと驚くほど回復しました。疲労が激しい日は一日に 6粒飲むこともありましたね。翌朝の体の軽さがまるで違いました。
そして正直に言うと、二日酔いにも効きます(笑)。打ち上げの翌朝もちゃんと 4時に起きて走れる。UTA SUPLI は私の挑戦を支えてくれる心強い相棒です。

奥村 康仁

私のタイムスケジュール

平日スケジュール
休日スケジュール

私の記録

2025年 大北アルプス(総距離 302.34km、累積標高 27,264mD+、29日 4時間 28分)
2024年 Mongolia Sunrise to Sunset 100km(モンゴル)4位(50歳以上優勝)
2023年 Trans Jeju By UTMB 100km(韓国)50歳代準優勝
2022年 Lake Biwa 100mile 総合 24位
2020年 Ultra Trail Tai Mo shan100mile(香港)3位(Masters46歳以上優勝)
2019年 UTMF 50歳以上5位
Swiss Alps 100mile(スイス)13位(日本人 1位)
忍者トレイル大会 50歳以上 優勝
2018年 舞鶴とれとれトレイル大会 50歳以上優勝
Reunion100mile(フランス)完走(日本人1位)