今年の夏、モンゴルで開催されたMongolia Sunrise to Sunset*というトレイルランニングの大会に出場しました。今年で25周年の歴史ある大会で、ウランバートルから北へ700km、フブスグル湖畔に位置するフブスグル国立公園で行われます。大会には42kmと100kmの2部門があり、私は100km部門に参加し、これまでの大会レコードを大幅に塗り替えて優勝することができました。レース前、そんなに山を走る練習をしていなかったのですが、ロードのように走れるところが多かったのが功を奏しましたね。100kの累積標高差は約2,120mで、山岳地帯がメインというよりも草原や硬い砂のジープロードが多かったです。運営側が予想していたペースよりも速かったようで、エイドステーションが開設していなかったり、水がなかったり、デポバッグが届いてなかったりというトラブルもあったんですけど、なんとか走りきり、良い結果が出せたのは嬉しかったですね。
*モンゴルにおいて1999年から始まり、今年で24回目の歴史あるトレラン大会
この大会は、ちょうど8月のお盆休みの時期に開催されます。私はこの時期にまとまった休みが取れるので、海外遠征先を探していたところ、シガウマラ*の族長から「この大会に出ない?」と声をかけてもらいました。実は、モンゴルはドラマ『VIVANT』を観てから興味があった国だったので、これはちょうどいい機会だと思い、参加を決めました。今回私は族長や族員の方々と一緒に参加してきたのですが、世界から来られる参加者数は100人までと決まっていて、ドイツやスペイン、アメリカなど、さまざまな国からランナーが集まっていましたね。この大会は単なるレースではなく、モンゴルの伝統的な家屋「ゲル」や「ティピ」に宿泊し、現地の伝統舞踊や音楽パフォーマンス、カヤックや乗馬体験なども楽しめるのが特徴なんです。ツアーでしか申し込めないため、レースと旅行がセットになっているという面白い経験ができました。
*滋賀県を中心に活動するトレランチーム。リーダーは族長、メンバーは族員と呼ばれる。
地元の広島から転勤で滋賀に引っ越してきて、半年も経たないうちにシガウマラに入族しました。シガウマラには、自分から志願して入るというルールがあるのですが、たまたま知り合いの中にシガウマラの族員がおり、その方を通じて「自分も入りたい!」と入族の意思を伝え、入れてもらいましたね。入族といっても、特に入族契約があるわけでも、儀式があるわけでもなく、ましてや決まった練習日や集会があるわけでもありません。実はふんわりとゆるい感じで活動しています(笑)。シガウマラは滋賀を拠点としたトレイルランニングチームで、その名の由来はメキシコの先住民族で、人類最強の走る民族とも言われる”タラウマラ族“です。チーム創設者で族長の奥村康仁さんが2014年に始められました。チーム内にはUTMF優勝者や日本代表選手が所属しており、関西圏ではかなり有名なチームですが、志願すれば基本的に誰でも入ることができ、初心者から実力派まで幅広いメンバーが揃っています。現在は総勢で97人の族員がおり、とても居心地が良いコミュニティですね。
個人でももちろん練習するんですけど、やっぱり族員と一緒に走るのは楽しいですね。シガウマラの場合、Facebookグループで「土曜日にこんな練習をするので、誰か一緒に走りませんか?」と呼びかけて、集まった族員と一緒に練習するという流れがほとんどです。練習後は、大体銭湯に行って、その後みんなでお酒を飲むという流れが定番になっています。練習の後に楽しみがあるのも、族員と走る醍醐味ですよね。それ以外だと、族長の奥村さんと一緒に走ると、すごく刺激をもらえることです。年齢は自分よりかなり上なのに、限界まで頑張ってもまったく追いつけないんですよ。ずっと先導してもらい、引っ張ってもらっている感じですね。族長以外にも、強い族員と一緒に走ることで刺激を受け、切磋琢磨できる環境があるのは本当にありがたいと感じています。昨年は、シガウマラの仲間と一緒にLake Biwa Triathlonのリレーにも出場しました。シガウマラには族長をはじめトライアスロンをしている族員が5、6人いて、せっかくだからランパートを担当してほしいと言われて走ったんです。シガウマラに入っていなければ絶対に見ることができなかった景色や体験がたくさんあったと思うと、本当に入族して良かったなと思います。トレランに誘ってくれた族員の方は今、石垣島に転勤してしまいましたが、どこにいてもシガウマラの族員であることに変わりはなく、そうした繋がりや、どこにいても同じ族員だと思えるところが、チームの良さだと感じています。
高校卒業後、自衛隊に入隊し、現在も隊員として働いています。私が通っていた高校は体育科で、部活は軟式テニス部に所属していました。部活の顧問が担任の先生で、進路について話している際に「自衛隊に入ってみたら?」と言われたのが、入隊のきっかけでしたね。その後、広島市の隣にある陸上自衛隊海田駐屯地に入隊し、隊員としての生活が始まりました。東日本大震災の際には災害派遣で東北地方へ行き、また広島で大雨による大規模な土砂崩れが発生した際にも派遣されました。その後転勤があり、現在は滋賀県内の駐屯地で隊員募集の仕事をしています。実は、滋賀に異動してきてから隣のデスクに座っていた方がトレイルランナーで、それがきっかけで私もトレランを始めることになったんです。
レースが近くなると月間600km近く、少ないときでも頑張って400kmは走るようにしています。100マイルレースが終わった後は300kmくらいに減ることもありますが、基本的にはこの数字を目標にしていますね。通勤時間をランニングに充てるようにしていて、行きか帰りに16kmの通勤ランをほぼ毎日こなせば、目標を達成できるんです。家から遠回りして30kmのコースを走ることもたまにありますね。私は自衛隊員なので、幸いなことに仕事の一環として体を鍛える時間が確保されています。業務時間内にジョギングなどができるので、他の人よりも比較的容易にトレーニング時間を確保できていると思いますね。また、私は以前まではあまり意識していなかったのですが、最近では月間累積獲得標高の目標を設定している人たちも増えてきました。私はまだ5,000mぐらいで、多分トップ選手の半分くらいだと思うんですけど、少しずつ意識するようになりましたね。
私はあまり週末にドカ走りせず、現代人らしい週末生活を送っています(笑)。シガウマラの族員と一緒に山に行くこともありますが、家族との時間も大切にしたいので、毎週のように行くことはありません。平日をうまく活用すれば、週末を丸々使わずに済むんですよね。妻も私を応援してくれていて、遠征についてきてくれたり、本当にたまにですが一緒に走ることもありますね。妻は普段そんなに走る人ではありませんが、来年の琵琶湖マラソンに“ノリ”でエントリーして、初めてフルマラソンに挑戦することが決まっています。いつも私が走っている姿を見て、「私もやってみようかな」という気持ちになったみたいです。ちなみに、山も一度だけ一緒にレースに出たことがあって、ペアの部で20kmを走ったんですが、終わった後はかなりヘトヘトになっていました(笑)。
昨年は香港のTransLantau*、今年の夏はMongolia Sunrise to Sunset 100k、そして今年の11月には再び香港のTransLantauに出場してきました。UTMBの参加にはランニングストーンが必要で、ストーンが多ければ多いほど当選の確率が高くなります。このストーンを獲得できる大会は、アジア圏では中国、香港、韓国、タイなどがあり、どの国のレースにも日本人の参加者は多いんですよ。これまで日本にはUTMBのストーンが取れる大会はありませんでしたが、2025年6月に石川県加賀市で開催される大会で、ついに日本でもストーンが獲得できるようになります。もちろん、その大会にも出場する予定です。現在、族長たちと一緒に2年後のUTMB出場を目標にしているので、これからもランニングストーンを集めるために、アジア圏の対象レースには積極的に参加していきたいと思っています。
*香港最大の島ランタオ島で開催されるBy UTMBレース
ロードも年に1回はフルマラソンに出場していて、今年は姫路マラソンで2時間34分51秒で自己ベストを更新しました。実は、私は普段あまり山を走らず、ロードの練習が多いんです。だから、フルマラソンで記録を更新できたのは素直に嬉しいのですが、それが必ずしもトレランの結果に直結しないのが面白いところなんですよね。登りの練習をしていないと、私よりフルマラソンのタイムが遅い人にもまったく歯が立たないこともあるんです。こうした奥深さが、トレランの魅力のひとつだと思います。トレランでは、登りの力、下りのテクニック、補給のタイミングなど、戦略的な思考が必要で、ただ体力があるだけ、ロードの走力があるだけでは通用しないんです。そういう総合的な難易度も含めて、なんだかんだでロードより山のほうが好きなのかもしれません。
私にとってトレイルランニングは、努力が成果として現れ、自分が輝ける場所だと思います。頑張れば頑張った分だけ結果として返ってくるので、それが何よりのモチベーションになりますね。またトレランは、自己成長の場でありながら、仲間と一緒に自然の中で遊ぶような楽しさも持ち合わせているのが魅力です。マラソンは数時間で終わるのでタイムがどうしても意識され、孤独な戦いになりがちですが、トレイルは長時間仲間と共に過ごすことも多い。一緒に汗をかきながら、素晴らしい景色を見て、スポーツでありながらも旅をしているような感覚になれるんです。ここからあそこまで行ったとか、山や湖を一望できる絶景を目の前にして、大きな達成感や充実感が得られる。タイムだけでなく、ランナー同士が声をかけ合ったり、助け合ったりしながら進む過程も楽しいんです。完走した人も、完走できなかった人もお互いを讃え合う。マラソンだとタイムが重要になりがちですが、トレランでは、目標タイムはあれど、完走したこと自体が大きな意味を持ち、「みんなよく頑張った!」という気持ちを共有できるのが最高です。現在私は38歳ですが、シガウマラの先輩たちからは「年々体力が落ちてくる」とよく聞きます。それでも、58歳の族長が100マイルを走り切る姿を見ると、年齢に関係なく若い人たちに負けないぐらい走れることを実感します。自分もできればそうありたいと思いつつ、まだそこまで先のことは見据えられていないのが現状です。今は「この瞬間を頑張りたい!」という気持ちが強いですね。まだ若いと言われる残りの何年かを、UTMB出場とフルマラソン2時間半切りを目標に頑張っていきたいです。
UTA SUPLIを飲み始めて、もう3年ほどになります。今や私の生活に欠かせない存在になっていますね。普段から質の高いトレーニングを積み重ねることができているのは、間違いなくUTA SUPLIの疲労回復効果によるものだと思います。また、UTA SUPLIは二日酔い対策にも良いので、お酒が好きなランナーの方には本当にオススメです。これからも長く常用したいアイテムです。
2024年 | Mongolia Sunrise to Sunset 100k(モンゴル)優勝 |
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姫路城マラソン(2:34:51) 総合32位 | |
2023年 | Trans Lantau140 By UTMB(香港)総合13位/年代別2位 |
ULTR-TRAIL Mt.FUJI 総合29位 | |
2022年 | 広島湾岸トレイル 総合5位 |
那岐ピークスタフトレイルチャレンジコース 優勝 | |
新城トレイル64k 総合5位 | |
2021年 | 花背トレイルランニングSコース 優勝 |